RB Leipzig リクルーティングスペシャリスト & タレントデベロップメント Per Nilsson〔インタビュー〕(2021/11/8)

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ギャップを埋める
 
Hugo NovoaはA+のソリューションである。

10月下旬、RB Leipzigのトップチームデビューを果たした18歳のスペイン人選手はGreuther Fürthとの試合で4-1の決勝ゴールを決め、クラブ史上最年少での得点を記録した。

NovoaはJesse Marschのトップチームに今季直接昇格した2人のU19の選手のうちの1人だ。(もう1人は16歳のSidney Raebigerで、8月にDFBポカールに出場し、クラブ史上最年少での公式戦出場となった)

しかし、2ndチームを持たないRB Leipzigにとって、U19からブンデスリーガやCLの上位チームへのステップアップは相当なものであり、そのギャップを埋めるべく、2020年に''キャリアセンター''の設立を決定した。

1つの目標の元、選手たちにレンタル移籍の選択肢を求めるキャリアセンターは元スウェーデン代表のNilssonにより率いられており、RBLのユースアカデミーを卒業した選手たちの移行エリアとして機能している。その目標とは、可能な限り高いレベルで、プレッシャーのかかる状況でトップチームの試合に出場するということだ。

NilssonはTransferRoomに対してこう語っている。

「我々には2ndチームがなく、トップチームしかない。つまり、ユースとシニアのサッカーには大きなギャップがある。キャリアセンターはそのギャップを個別にカバーし、将来を見据えたトップタレントのための正しい決断を下している。

U19からいきなりCLで活躍できるような優秀な選手に向けたプランA+だけでなく、若い才能ある選手が他のクラブやリーグにレンタル移籍を通じ、自然にステップアップできるよう、自分たちが責任を持ってサポートする方法だ。」

データに耳を傾ける

Nilssonはヨーロッパの5大リーグを調査した結果、平均して22歳から23歳の選手がヨーロッパのトップクラブでトップチーム入りを果たしていることを突き止めた。

そのため、キャリアセンターでは19歳から23歳までの4年間のライフサイクルを設定している。

「サッカー界では選手がブレイクするのはこの年齢と言われている。しかし、4年間を全うする必要はない。ある選手は1年でその境地に達し、ある選手は4年でその境地に達する。

NürnbergのTom Kraußのように1,2年のレンタル移籍を経て、RB LeipzigでプレーできるA+の選択肢として戻ってくる選手もいるかもしれない。それを常に作り出すことができれば、素晴らしいことだと思う。」

ライプツィヒ出身のKraußはブンデスリーガ2部のFC Nürnbergで2年目を迎え、最近ではU21ドイツ代表としての最初の3試合で2得点を挙げるなど、優秀な成績を収めている。

現在、キャリアセンターではドイツの下部リーグや近隣国にレンタル移籍している選手が7人いるが、彼もそのうちの1人である。残りはDennis Borkowski (Nürnberg)、Tim Schreiber (Hallescher FC)、Fabrice Hartmann (SC Paderborn)、Frederik Jäkel (ベルギー・KV Oostende)、Eric MartelとNoah Ohio (共にオーストリア・Austria Wien)だ。

選手の次のステップの行方を決めるのは1人の仕事ではない。RB Leipzigは''タレント評議会''を設立した。これはNilsson、Christopher Vivell (テクニカルディレクター)、Frank Aehlig (シニア部門責任者)、Felix Krüger (スポーツコーディネーター)、Sebastian Kegel (ユース部門責任者)、Marco Kurth (トップチームアシスタントコーチ)、Christian Streit (ユースアカデミーディレクター)とMarcus Darmochwal (アカデミー運営/契約責任者)から成っている。

「タレント評議会では前シーズンのフォローアップのために定期的に話し合いをしている。選手一人ひとりの成長ぶりや契約状況を確認し、シニアレベルのサッカーへの準備が整っているかどうかを話し合う。できる限り良い評価を得るためだ。

全ての選手がキャリアセンターに入るわけではなく、パフォーマンスとポテンシャルのバランスが取れており、シニアレベルでキャリアを積めると思われる選手だけがキャリアセンターに入る。

そして、次のシーズンが始まる前の9月という早い時期に、選手一人ひとりにとっての次のステップを決めるために、話し合いを行っている。

ネットワークの形成はとても早い段階から始まっている。クラブは4月や5月に翌季のチーム編成を考えているわけではない。だから、我々も早い段階で決断し、ネットワークを構築する必要がある。」

MartelはTransferRoomによって移籍

2017年にSDを務めていたRalf RangnickのアシスタントとしてRB Leipzigに加わったNilssonはクラブの若い才能が最高の移籍をするための幅広いネットワークを誇っている。

そしてTransferRoomは直接的で迅速な情報により、彼が特定のクラブのニーズを把握するのに役立っている。

「我々は戦略的に働きたく、TransferRoomを利用することで多くのコンタクトが生まれた。例えば、Eric MartelがAustria Wienに移籍した時も、TransferRoomでRalf Muhr (ライセンス部門責任者)と連絡を取って、かなり早い段階から話を進めていた。Ericと彼の状況についてたくさん話し合い、取引を成立させた。

19歳のCBであるMartelは2021年1月にTransferRoomで進められた取引によって1年半のレンタルでAustria Wienに移籍し、今季のオーストリアブンデスリーガで常に存在感を示している。

チームがRB Leipzigと同じようなやり方でプレーしているかどうかよりも、ピッチでの出場時間がNilssonにとって重要となっている。

「若い選手にはできるだけ大きな声でこう言っている。試合に出なければならないし、11対11でピッチに立たなければならない。スタンドには観客がいて、プレッシャーがあり、試合に勝たなければならない。そういう状況下で成長していく。それ以上に複雑なことはない。プロサッカー選手になるにはトレーニングだけではダメで、プレーすることが必要だ。選手がプレーして成長するために、可能な限り高い舞台で、可能な限り高い割合のチャンスを与えること。それが、自分がまず第一に求めていることだ。

哲学は重要だが、自分はチームがどうプレーするかという原則よりも、ピッチ上の分数を大事にしたいと思っている。選手を獲得する時にクラブやその選手がどのようにプレーしているかは決して見ない。その選手のプロフィールを見る。その選手がどのような能力も持っているのか。その選手がどんなことを達成できると思うか?パフォーマンスについて、データから何が分かるのか?それら全てがチームの哲学と大きく異なることがある。」

情報フィルター

Nilssonの仕事は選手がレンタル移籍しても止まらない。夏の前半はドイツ、ベルギー、オーストリアの各地にいる選手たちを訪ね歩き、自分のスカウト部門やレンタル先のクラブのSDと常に連絡を取り合って、進捗状況をチェックしている。

「スカウティングレポートを受け取り、選手が出場する試合は全てテレビで見るようにしている。主観と客観をうまく切り分けている。監督やSDとやり取りをしながら、プランの話をする。そして、他の専門家へのメッセージの伝達をコーディネートする。自分はフィルターなんだ。

選手のレンタル期間が始まると、自分が選手一人ひとりを熟知していることが有利に働く。どの選手ともっと連絡を取らなければならないか、どの選手をもっと放っておいたほうがいいかが分かる。

例えば、Tom Kraußは毎試合出場しているし、トップチームでも良いパフォーマンスをしているから、毎週彼の様子を窺う必要はない。いつ、どのように選手と連絡を取るかというソーシャルスキルが必要とされる。」

しかし、それは競技面のレベルを評価するだけではない。NilssonとRB Leipzigは選手たちの精神的な健康状態にも責任を持っている。

「この選手はどこまで成長したのか、シニアレベルのドレッシングルームに入れるのか、プレッシャーに耐えられるのか、1万人の観客に囲まれ、自宅から引っ越す準備はできているのか、これら全てを詳しく確認する。軽視されがちだが、若い選手にとって、慣れ親しんだ環境から新しい街、新しいクラブに移ることがいかに難しいか、自分は自分の経験(現役時代にスウェーデン、ドイツ、デンマークでプレー)からそれを知っている。

Tom KraußはLeipzigからNürnbergに移籍して、生まれて初めて引っ越した。僅か2時間半の移動だが、Tomにとっては初めての引っ越しで、挑戦だった。そういうことを自分たちは全て知らなければならない。パフォーマンスを発揮し、成長をしていくのは常に人間なんだ。ロボットではない。だからこそ、精神的、個人的なサポートが重要となる。」

Nilssonにとって、Krauß、Martel、そして今季Oostendeで活躍し、U21ドイツ代表に初招集されたJäkelの活躍はキャリアセンターが正しく評価されたものだ。

彼らの将来はさまざまな要因に左右されるが、Nilssonとクラブは次世代のための正しい土台を築いていると確信している。

「もちろん、そうなることがA+の策ではあるが、キャリアセンターからトップチームに入る選手の数が決まっているわけではないし、それを実現するために日々働いている。それが、最も意味のあることであり、このプロジェクトで作ることのできた最も素晴らしい物語になる。

しかし、我々は多くの策と可能性を持っている必要がある。A、B、Cの策も必要だ。最も重要なのは選手の成長を止めることではなく、選手が次のステップに進む準備ができているならば、その次のステップを確実に用意することだ。」