Red Bull GmbH Head of Sport and Development Ralf Rangnick〔インタビュー記事〕(2020/4/15)

 

Ralf Rangnickはライプツィヒに戻っていた。ただレッドブルグループの仕事で訪れていたニューヨークやブラジルからではなくバッケナング(ドイツ南西部にあるRangnickの故郷)からだ。Rangnickは昨今とても重要視されている、人と人との距離を保つということに最大限の配慮をした上で、81歳の母Erika、88歳の父Dietrichの元を訪れていた。レッドブルグループのHead of Sport and Developmentスポーツ部門及びサッカー開発部門の統括人)を務めるRangnickはコロナウイルスによって困難な中、イースター休暇明けの規制の緩和、サッカー界におけるインパクト、ライプツィヒ市で働くヒーローたちへの貢献について語った。

インタビュアー:地元の両親の元に10日間滞在していたと思うのですが、どれくらい共に過ごすことができたのですか?
Ralf Rangnick:両親のための買い物をして、毎日一緒に散歩に行っていた。ハグやその他の物理的接触は避けていた。我々はこの危機的状況を甘んじてはいけない。そして、もちろん両親とは同じ屋根の下では過ごしていない。

インタビュアー:両親はどのようにこの状況を考えていたのですか?
Rangnick:私の父親は戦争を乗り越えてきているからウイルスには恐れていないと話していた。私は彼と話し合い、この恐ろしいウイルスに関しての注意しなければいけない点について伝えた。

インタビュアー:ドイツ政府の危機管理や外出や接触の制限、そしてそれらの緩和についてはどのように評価していますか?
Rangnick:この方針に関してはこれ以外の手段はなかったと考えているし、我々皆が望んでいるように政府も望んでいた影響が出ていると考えてる。緩和に関してはロベルトコッホ研究所(RKI)も慎重に今後の展開を述べている。

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HundertwasserのメンバーとRangnick。ライプツィヒで闘う人たちへ10000€(約120万円)分の食料を提供している。

インタビュアー:このような困難な状況を説明する義務のある専門家がプレス、ラジオ、テレビにおいて自分たちの利権にしか考慮せず主張をしている場面も目立ちますが、そのような意見には今でも耳を傾けているのですか?
Rangnick:確かに、意見形成は今までもそしてこれからも容易なことではないことは事実だ。多くの予想は日に日に変化が生じている。現状況の緩和に関しては緩和した時に日々の生活がどのようになるのか、明確に想像することができたうえで、状況が許さない限りは行われるべきではないと考える。国立科学アカデミー・レオポルディーナの見解は1つの指標として該当するだろう。そして、もし防護マスクが今後の生活をより活性化させ、社会が元に戻ることを助長するものになりえるのであれば、着用の義務化をするべきだろう。十分な数のマスクがあればの話ではあるが。

*4/25現在でドイツにある全16州が州ごとに差はあるものの、主に公共交通機関やスーパーでのマスクあるいは鼻と口をカバーできるスカーフやマフラーの着用を条件に規制の緩和を発表している。

インタビュアー:イースター休暇前のスピーチにて、ドイツ大統領であるシュタインマイヤー氏は、バルコニーや庭のない狭い家に住む家庭やひとり親家庭の人々や経済的な困難にある人達への配慮が必要との考えを発していました。そのような点に関してはどのようにお考えですか?
Rangnick:これらの問題とその問題によって及ぼされる影響はとても複雑なもので、時には目に見えないようなものも存在する。だからこそ政府はよい判断を下すためにも各分野での専門家にアドバイスを求めなければならない。ウイルス学者、社会学者、心理学者、医者、倫理学者、経済学者などがその例だ。

インタビュアー:(情報の)正確さは早さよりも重要視されると考えますか?
Rangnick:はい。ただこのような状況では可能な限り正確でなおかつ早く情報を伝える必要がある。

インタビュアー:ドイツでのリーグ中断に関しては時間を要しすぎたと思いますか?
Rangnick:いいえ。私が把握している範囲ではすべての決断は保健機関(RKIなど)や各地方自治体の最新の見解をもとに行われてきた。

インタビュアー:中断されているリーグを続行させることは可能なことだと考えますか?
Rangnick:多くの損失も伴ってしまうが、可能だと考える。プロサッカーは例外的な立ち位置としてあってはいけないし、許されてもいけなく、そのような例外的なものなることもない。ただ、サッカーは我々の生活における他の経済的、社会的要素と同様に重要なものでもある。仮に、チームや関係者、(試合運営に)直接関わってくるすべての人が健康状態を保っていて、定期的に検査を行うことができるのであれば、シーズンを終了させることは可能だろう。無観客で行わなければいけないのは必須条件だと考えている。この期間はしばらく続くとみている。

インタビュアー:存続の危機にあるクラブもあるなかで、シーズンを続行することによって、放映権料が支払われたり、競技面では優勝や昇降格チームのを確定させることもできますね。
Rangnick:その点も重要だ。我々は競技面、経済面の両面からシーズンを終わらせれるように団結している。

インタビュアー:ファンやサポーターがいない中での試合で選手たちはすべての力を発揮することができると思いますか?
Rangnick:選手たちはそうせざるを得ないし、きちんと力を発揮するだろう。チームは非公開でのトレーニングマッチも行ってきている。今までは戦術的な面、フォーメーションや人選を隠すためが多かったが、今回はそれが社会的な要因になっただけだ。我々はこのような状況にも立ち向かう必要がある。

インタビュアー:いくつものクラブがリーグの中断によって収入を得ることができず、数週間後には倒産してしまう可能性もあります。このコロナの状況下というよりかは、むしろ今後のサッカー界はどのようになっていくと考えますか?
Rangnick:現在と同じ方法でクラブを維持していくことは難しくなるとみている。先を見通す力、クラブとしての持続性などがより重要となるだろう。選手や指導陣の育成、強化を持続的に行う必要がある。手元にあるお金で選手や指導者に巨額の投資をし続けることのできるチームはほんの一握りになるためだ。若い選手たちはLeipzigに来ることはより成長するためのいい機会になることを知っている。

インタビュアー:移籍市場における移籍金はどうなると考えていますか?
Rangnick:下落するだろう。移籍金に限らず、将来的には選手や指導者の年俸も少なくなる可能性がある。

インタビュアー:このような状況から高額の違約金が設定されているDayot UpamecanoやTimo Wernerには相応の獲得オファーが届かない可能性も考えられます。彼らを引き留める可能性はありますか?
Rangnick:移籍市場で絶対的に注目されているような選手に関しては常に移籍の扉は開いているだろう。ただ不確かな要素の多いこの時期から新たな挑戦によるリスクを冒さない可能性も考えられる。DayotとTimoは今のLeipzigがどのような状況にあり、彼らがこれまで成し遂げてきたこと、そして今後もLeipzigで結果を出し続けれることを理解しているだろう。

インタビュアー:2017年の1月にRB SalzburgからLeipzigに移籍してきたUpamecanoは最初のトレーニングでWernerとの1対1の攻防でWernerに勝利した。Wernerにとっては人生で初めてスプリントの勝負に負けた時だったそうだ。当時からそれほどの才能を示していたUpamecanoの獲得はあなたのキャリアにおいて最も素晴らしい取引の1つになったと考えていますか?
Rangnick:彼の取引に関しては素晴らしいものだったと思う。16歳でFC ValenciennesからSalzburgに移籍した際の移籍金は€2.8Mだった。決して安い額ではなく、額相応の結果を出すかどうかの確証は持っていなかった。当時Chelsea、Bayern München、Manchester Utdも関心を示していた。Dayot本人と家族、代理人は明確なキャリアプランを立てていて、それに基づいてSalzburgへの移籍を決断した。

インタビュアー:Timo Wernerは2016年の夏に移籍してきました。彼の獲得に関しては誰も疑いの目を向けていませんでした。彼に関してはどのように評価されていましたか?
Rangnick:彼は非常に若く信じられないような素質を持っていたストライカーで、まだその秘められていた能力が発揮されていないと思っていた。

インタビュアー:もし仮に現状のスカッドを維持することができた場合、Leipzigの今夏の移籍に関してはどのようになると考えていますか?
Rangnick:現状、スカッドは素晴らしいメンバーが揃っている。どの選手も年々成長し続けている。なので、多く手を加える必要はないだろう。

インタビュアー:クラブCEOのOliver Mintzlaff、SDのMarkus Krosche、そして監督のJulian Nagelsmannは現在ローンで加入しているAngeliñoとPatrick Schickに付随しているオプション額(両者共に約€30M)の行使、減額も模索しています。
Rangnick:(買い取りが)実現したら素晴らしいだろう。

インタビュアー:Julian Nagelsmannは若返ったRangnickですか?
Rangnick:彼はLeipzigに成功をもたらす人物で、ここまで我々が期待していた通りの素晴らしい仕事をしている。彼は確固たる哲学を持ち、細部までこだわりが強く、ピッチの中でも外でもオンとオフの切り替えを上手にこなしている。

インタビュアー:Marcel Sabitzerはチームに欠かせない主力選手の1人です。2015年に当時2部にいたLeipzigに移籍してきた彼は移籍に関しては非難もされましたがどのように評価していますか?

*当時オーストリアのRapid Wienに所属していたSabitzerはLeipzigに移籍後すぐにSalzburgへローン加入した。RapidはSabitzerの契約に国内クラブに適応される契約解除条項を含めていたものの、その条項が適応されないLeipzigを経由する形でのSalzburgへの加入に否定的な声も多く上がった。

Rangnick:Sabiは攻守にわたって貢献できる選手で、チームのリーダーでもある。2015年の移籍はRBにとってもSabi本人にとっても正しいものだった。

インタビュアー:Hundertwasserを通して最前線で戦っている人たちへの支援を行っていますが、一緒に調理も行なっているのですか?
Rangnick:調理はしていないが、この素晴らしい取り組みに10000€の支援を行った。毎日最前線で動いている人たちはこのようなものや援助を受け取るに値すると考えている。また、個人的にも別で5000€をLeipziger Archeに寄付をし、それらは子供たちの学習に使われるコンピュータ10台の購入に使用される。