RB Leipzigユーススカウト Winfried Möller〔インタビュー〕(2020/4/10)

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インタビュアー:あなたは良い意味で「人たらし」と思われているのでしょうか?若いサッカー選手との仲の良さはどこからくるのでしょうか?
Winfried Möller:個人的にはその言葉は好きではない。でも、もちろん子供や親を説得して、既存の才能を伸ばすことは好きだ。重要な原則は正直であること。たとえそれがネガティブなケースで最初は傷つくことがあってもね。また、8歳でも13歳でも17歳でも、全ての選手を一人前の人格として尊重し、接することが常に自分の哲学の一部となっている。

インタビュアー:サッカーをし始めた最初の数年間は何が大切ですか?
Möller:何よりもスポーツの楽しさをかき立て、成長させること、そして共存のための基本的なルールを身につけることが大切だ。

インタビュアー:7歳から12歳の段階で、プロになるために必要なものを備えている子供は既に認識されているのでしょうか?
Möller:このスポーツは複雑だから、それについて言うことは非常に難しい。ただ、誰育成をするに値するか、プロになるという目標を達成しうるかを予測することは間違いなくできる。もちろん、バンビーニ(7歳以下)の選手よりも12歳のほうが少し簡単だ。

インタビュアー:ここ数十年で、ユース世代では何が変わったのでしょうか?
Möller:勤勉さや向上心といった基本的な美徳はいつの時代も変わらないものだし、選手自身が成長におけるカギであることも変わらない。しかし、もちろん、この数十年の間に多くのことが変化し、発展してきた。ただ、これは社会情勢にも大きく左右される。例えば、ベルリンの壁が崩壊する以前はトレーニングは「実験室的条件」、つまりスポーツに完全に集中した状態で行われていた。しかし、その後、他の多くの影響力が有効に働くようになった。今日、選手に対する要求は、より早い段階でから、より複雑にものになっている。C-Junioren(U15世代)の段階で運動能力がまだ十分でなく、ほとんど、あるいは全くプレーしていない選手は発達上のハンディキャップがあり、それを補うことは難しい。若い選手のための競技システムを見直す余地があるのは確かだ。

インタビュアー:保護者が怒るという報道も増えています。これについて、どのようなご経験をお持ちですか?
Möller:一般的に社会的なマナーが低下していると言われている。しかし、これはサッカーに限った問題ではない。低年齢層でフェアプレーリーグが導入されたことで、社会的な責任感が強くなっている。審判がいなくなったことで、多くの「知ったかぶり」がピッチ上の厄介者とされなくなったし、保護者のピッチまでの距離規定が、保護者による「良かれと思ってのヒント」から選手を守ることになった。ただ、決定的なのは指導者である。

インタビュアー:なぜか?
Möller:彼らがお互いにフェアに接し、一緒に試合を進行し、引導することで、それがプレーする子どもたちだけでなく、観客にも伝わっていくからだ。

インタビュアー:あなたは2009年にFC Sachsenを経てRBにやってきました。運命、幸運、宿命?
Möller:全てかな。いずれにせよ、自分にとっては最高の出来事だった。自分の経験と意思を通じて、スタッフや選手みんながベストを尽くせるような体制に一新するチャンスに恵まれた。

インタビュアー:U8からU13までの年代において、RBでのサッカーは初期の頃からどのように変化したのでしょうか?
Möller:09/10シーズンはU13、U15、U17、U19の4チームでスタートした。現在はU8からU13の年代に10チームがあり、専門的な指導者を含めた約30人の指導者がいる。数年前から、スモールサイドゲームの領域には体操もしっかりと組み込んでいるが、これは非常に良い判断だった。さらに、チームは育成をする上で最適なレベルに属し、より高い年齢層と対戦している。また、子どもたちの一般的な運動やスポーツ活動が低下する傾向にあり、これらをクラブでどんどん引き受けていかなければいけないため、昨季からはU9のトレーニングを2回から3回にしている。

インタビュアー:この年代のトレーニング量が多すぎるという不満もあります。TSG Hoffenheimのようなクラブは異なるアプローチをしています。これについてはどうお考えですか?
Möller:どのクラブも自分なりの哲学を見つけなければいけない。まだ若いクラブであるRBはまだ発見段階にあると思う。自分たちで経験を積み、反省していく。余暇における学校体育や運動が減る傾向にあるから、基礎運動をする上でクラブは重要性が増している。汎用性を高めるためには年齢に応じた内容を提供することが肝要だ。今、地域の大きなクラブが子ども向けの基礎運動の機会を減らしていることは間違った方向だと自分は思う。

インタビュアー:ボールを持ってより多くの解決策を見出すことを目指すJulian Nagelsmannのサッカースタイルは育成年代の選手たちの活動に影響を与えているのでしょうか?
Möller:Ralf Rangnickの時代からボールと対峙するプレーとボールを持つプレーのバランスは取れていた。RalfがJulianに決めたのも、新しい刺激を与えるためだったのだろう。数年前まではほとんど自分たちの専売特許と言えたプレースタイルが、いまやMarco Rose, Oliver Glasner, Marcus Gisdolなどの下で広く浸透している。現代的なプレー哲学を後退させることなく、さらに発展させるアクセントを見つけることが重要だ。もちろん、これは若いタレントにも当てはまる。

インタビュアー:若いサッカー選手にとって、どの時点でお金がモチベーションになるのでしょうか?
Möller:残念ながら、イデオロギーの独裁と金の独裁の転換についてのFriedrich Schorlemmerの発言は完全に否定することはできない。そうやって社会は発展してきたし、もちろんそれは競技としてのサッカーにもある程度当てはまる。お金の話は既にほとんどが代理人を持つ13歳14歳という若さの選手たちの親御さんにも残念ながら、影響を与える。自分がそのようなことほとんど関係ない年齢層で仕事をしてきた要因なのかもしれない。

インタビュアー:RBの育成年代の選手たちがトップチームに上がらないのはなぜですか?
Möller:それは計画的にできることではない。今はCLのような世界規模の大会があり、それに対応したスカウティングシステムが背景にある。サッカーは急速に発展している。近年、ドイツでCLに出場したホームグロウンの選手は何人いたでしょうか?自分はあまり思いつかない。Kai Havertzはいるが、あとはなかなか名前が挙がらない。RBの目標は自分たちのプロチームのために選手を育成することだけではない。

インタビュアー:というと?
Möller:プロサッカーの舞台で戦うことができる才能ある選手を育てることだ。それもCLレベルに限らず、3部リーグレベルもだ。この3年間で25人以上の若い選手をプロサッカー界に送り出した。将来的には自分たちのユースチームからトップチームのために選手を育てていくことになると思う。

インタビュアー:才能ある選手がシニアレベルの試合で勝負強さを身につけ、トップチームに入る流れを作れたU23チームの解散は間違いだったのでしょうか?
Möller:結局は各クラブが自ら判断するしかない。賛否両論あるのは明らかだ。担当者は当時、間違いなく何かを考え、解散する理由があったのだろう。それを評価することは自分位はできないし、するつもりもない。

インタビュアー:2月からはRBでユースのスカウトの仕事をされているそうですね。どんな仕事をしているのですか?
Möller:自分の仕事はこの地域の育成年代で最も優秀で有望な人材を見つけることだ。つまり、これまでと同じことをやっているわけだ。今は、より集中的にこの仕事に専念できるようになった。パンデミックの間、自分は現在、家事とU8からU12/13年代までの自分が担当してきた期間の統計的検証作業を行なっている。それを除くと、ようやく練習が再開できることを待っているところだ。